ベッドと布団、どちらが便利か
おじいさんがベッドに腰掛けているイラスト お年よりや障害を持って「起きあがり」が不自由な方には、ベッドと布団のどちらが良いでしょうか。介護した経験から、布団からベッドに変え、介護負担が軽減した方や、また本人がベッドを好まず、ずっと布団と和式の生活パターンでやってきた経験から、本人の要望を第一にという意見。布団は座ったままで動いていけるし、ベッドのように落ちる心配がないと意見もあります。
 さてさて、ベッドがいいのか、布団がいいのか迷ってしまうのですが、動作からみると布団が大変なところは、「立ち上がり」です。実際、床からの「立ち上がり」は、「歩く」より難しい動作です。それに対して、同じ「立ち上がり」でもベッドでは、ベッドの端に座ったところからであり、ずっと立ちやすい。また、ベッドでは手すりや、背上げを使え「起きあがり」も楽だし、介護者も介助しやすい。
 そんなわけで、一概にはいえないが一般的にはベッドがお勧めです。そして、本人も介護者も操作が楽な電動ベッドが良いでしょう。

起きあがる
 起きあがろうとする時、身体はどのように動いているでしょう。
 普段、意識して「起きあがり」していないけど、注意してみると起きあがり方で違いがあることがわかります。若い人は、あお向けからまっすぐ起きあがり、年をとるにしたがって横に寝返りしてから起きあがりになり、その寝返りのし方も大きくなる傾向です。それはどうも、上体を起こす役目をするおなかの筋肉の強さに関係があるらしいと考えられます。年をとるにしたがって、おなかの筋肉が弱くなるので、寝返りをして腕の力を利用して起きあがるわけです。この動き方は、誰に教わるわけでなく、加齢とともに体も自然に、また動き方も年相応に変化していきます。
 最初に寝返りを打って横向きになり、肘をついて、手で体を支えて上体を起こすやり方をしっかり覚えてください。このやり方は、誰にとっても「起きあがり」の基本であり、介護方法や、福祉用具の使い方、選び方などにつながり、とても重要だからです。

立ち上がる
 次は、立ち上がりの動作について考えてみましょう。
 試しに椅子から、つま先を壁につけた状態で立とうとしてください。立ち上がれないか、立ち上がれたとしてもかなりつらいはずです。なぜ、立ち上がりにくいのでしょう。それはこの状態では、立ち上がりに必要な前方への体重(重心)の移動ができないためです。誰でも椅子などから立ち上がる場合、座った状態での膝の位置より少し前方に顔が出る位の体重移動が必要なのです。足腰が弱ってくると、前方への体重移動がさらに求められます。身体が不自由になって立ち上がり難くなる一番の原因は、実はこの前方への体重の移動が苦手になるためです。
 少しでも立ち上がることができれば、車椅子に乗り移ったり、椅子に腰掛けて食事をしたりすることで、寝たきりの生活から脱出することができるのです。
 そのために」立ち上がりが「楽に」「安心して」できるように、体重が十分前方に移動できるための知恵と工夫が求められます。ベッドに取り付ける移動バーもその一つです。

ベッドに関する福祉用具
 ベッドといっても、いろいろな種類があり、その機能もそれぞれ違っています。その機能を良く知った上で利用しましょう。
 ベッドの幅は、寝返りして起きあがる動作を考えると、広めの方がよいのですが、医療用ベッドは、広いタイプはまだ少ないのが現状です。
 ベッドの高さは、ベッドの横に座って、足のうらがしっかりと床につく程度が基本です。でも介護する人にとっては、もっと高めのほうが腰に負担がかからず、介護しやすい面もあります。ですから、できれば高さ調整できるものがほしいわけです。
 マットは、一般的には、寝返りや起きあがりがしやすい少し固めのマットを選びましょう。褥そうがある場合や、寝返ることがまったくできない人は、除圧効果の高いもの(特殊なウレタンフォームマット.ウォーターベッド.エアマットなど)が必要となりますが、除圧効果の高いマットは、柔らかく、不安定で、「起き上がり」や「座位」をしにくくするので、導入は十分慎重にしてください。

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