食事の持つ意味
 食事の持つ意味は、生命維持に必要な栄養の補給という意味の他に、好きなもの、おいしいものを食べるという生活の楽しみや、食卓を囲んでの会話やコミュニケーションという側面も持っています。
 しかし、加齢や何らかの障害によって、うまく食べ物を口に運ぶことができなくなったり、飲み込むこと(嚥下)が不自由になった時、食事の楽しみは、徐々に苦痛やむせることへの恐怖へと変わってしまいます。
 また、入れ歯が合っているか、口の中の衛生状態はよいか等の歯科・口腔のケアへの配慮も必要です。
おばあさんが食事しているイラスト
 つまり食事のための福祉用具の使用や調理方法の工夫、歯科の専門家のアドバイスを受けることで、食事の楽しみを取り戻すことが可能になるのです。

食べる姿勢とテーブル
 寝たままの姿勢では、食べ物を噛んだり飲み込むことが難しく、介助者が食べ物を口に運ぶのも難しくなるので、背上げ機能を利用したとしても、ベッド上での食事はできるだけ避けた方が良いでしょう。
 食事をする際は、少し前屈みで足を床に降ろした姿勢が適しています。できれば、床に足をつけて背筋を伸ばし安定した座位を保てる椅子に座り、前かがみになった時肘をついて安定できるように、座った状態で肘の高さよりも少し高めのテーブルを利用して下さい。
 食事をするために適したテーブルとして、介護テーブルがあります。利用者に合わせて高さの調整ができ、より体に近づけることができるように天板の形も工夫されています。また、ベッドサイドや車いすでも使用できるような工夫もされています。

お皿・お椀
 通常の食器の場合、障害などを持たない者であっても、器に残った少量の食べ物をすくったり、つまんだりすることは困難です。そこで、食器の中で食べ物を集めやすくするために、形に工夫をした食器があります。
 スプーン等ですくいやすいように、お皿やお椀の内部が湾曲しているものや、スプーン等の出し入れがしやすいように食器のへりの一部を低くしたものがあります。さらに、裏側に滑り止めの加工がされており食器をおさえていなくても、片手だけで食べ物をすくうことができる食器もあります。
 また、工夫された食器を買い揃えなくても、通常のお皿に食べ物をすくいやすくするための「へり」があると便利です。フードガードは、お皿に装着し「へり」を容易に作ることができます。柔軟性のある素材でできており、直径20cm程度までのお皿に対応しています。
ケンジースプーンの写真

スプーン・フォーク・箸
 筋力の低下によりスプーンやフォークを握ることが困難になったり、麻痺等により口に食べ物を運ぶ動作が困難になることがあります。これらは、柄の太さや形状に工夫したものを使うことで改善することができます。
 柄の部分を太く握りやすくしたり、柄の部分と先端のすくう部分に角度をつけて肘や肩がうまく曲がらなくても口に食べ物を運べるものがあります。また柄の部分の形状を自由に変えられるものや、通常のスプーンに装着する補助具もあります。
 箸はスプーン等に比べて、二本で一対になっており、指先の動作で食べ物をつまみ、その状態で口元まで運ぶ、という点で使い方が難しいのですが、この点を改善した箸があります。持ちやすいグリップと。ばね状の弾力がついており、箸で食べ物をつまむ動作を助けてくれます。
 また、スプーンと箸の両方の機能を持った多機能スプーンがあります。ピンセットの先端がスプーン状になったようなもので、つまむ、すくう、さす、柔らかいものを切り分ける等の機能が盛り込まれています。
使いやすいおはしの写真 形状記憶スプーンの写真

その他の福祉用具
 手でおさえなくても、食事の最中に食器がずれたりしないために、滑り止めのマットや滑り止め加工されたお盆があります。
 噛むことや飲み込むことが困難な場合、細かくきざんだり、ゼラチン等で飲み込みやすく固める等の調理の工夫が必要になります。しかし、調理の工夫が出来ない事情がある場合、ミキサー食のレトルト食品や汁気の多いものに「とろみ」を加えるための添加剤(増粘剤)が市販されています。
 また、食事に加えて水分摂取も大切です。ストローを使用したり、握りやすいホルダー付きのコップや、吸い飲みの使用が有効です。

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