お年寄りと家族が住み慣れた家で安全にそして安心して生活をしていくためには、様々な福祉用具を利用したり、住宅改修を活用することも一つの方法です。
 そこで、今回は様々な福祉用具の利用と住宅改修の事例について紹介いたします。



 まず始めにお年寄りの自立を助け、家族の介護負担を軽減するのに役立つ様々な福祉用具の利用方法や工夫を、札幌市西区に体験型ショールーム「はっさむ快護ひろば」を開設している株式会社特殊衣料の藤本欣也さんにご紹介いただきます。

寝 室
 介護保険で福祉用具を利用されるときにまず思いつくのが介護ベッドではないでしょうか。介護ベッドは、電動で3モーター(背上げ・膝上げ・高さ調節)のものが基本です。背上げ角度を自分で思い通りの角度に調節したり、脚がむくんだりだるいときは、膝を上げて楽にすることができます。また、こまめに高さを変えることで、ベッドからの移動や移乗がしやすくなります。
 介護者の方にとってもベッドを高くすることで、腰をかがめなくてよくなり、介護の負担が軽減されます。
 寝たきりの方の移動には、住宅改造をしなくてもよい、簡易型の据え置きタイプのリフトがあります。150キロの人まで上げられますので、体力に不安な方や女性には頼もしい味方になります。ただし、使用する際には天井の高さや利用者の部屋の大きさに注意することが必要ですので、事前に十分確認することが必要です。

キッチン・ダイニング
 車いすを利用されている方がキッチンに入るには、まずスペースのことを考えなければなりません。動くスペースはもちろんのこと、車いすの入るスペースも考慮に入れます。写真では、シンクの下のドアを外し、車いすの入るスペースを確保しています。
 キッチンでは、比較的小さいものや高いところにあるものを取ることが多いので、マジックハンドを用意すると便利です。また、片手が不自由でも使える調理器具もたくさんありますし、スプーン、フォーク、箸、食器などの自助具も非常に豊富です。また、テーブルで使う滑り止めマットやトレー、細い柄のスプーンを握りやすくする太いゴムの柄などを利用すれば、現在使用している食器も大変使いやすくなります。

お風呂
 お風呂で利用できる福祉用具にも様々なものがありますが、お風呂3点セットと言われるのが、シャワーチェアー、バスボード、そして風呂用手すりです。
 シャワーチェアーは、以前は背もたれなしのタイプが主流でしたが、今は背もたれがつき、身体の横も確保したものが多くなってきました。回転するものも多く家族も使えるタイプ、折りたたみができる省スペースタイプも多くなりました。
 バスボードは、厚みに注意することが必要です。湯船の縁に座れる方が、バスボードを置くと高くなりすぎて座れないことがありますので注意しましょう。
 手すりは、壁への手すりがつけられない場合には大変便利なものですが、湯船の縁の幅によってはつけられないものがありますし、新しい湯船ですと段がついていたり、端へいくほどカーブがきつくなっていたりして、思ったほど端につけられない場合があります。バスボードと手すりを同時に使うときは、実際にシュミレーションをしてみることが大切です。中にはスペースをとってしまい、どこから足を入れたらいいのか分からないことがありますので注意してください。

トイレ
 住宅のトイレの便座高は意外に低く、片麻痺の方や高齢者の方には特に低く感じられ立ち上がりに不便をかけます。そんな時、補高便座という便座高を高くする道具があります。ただし洗浄機能付便座には使用できません。
 トイレの中の簡易手すりは、便器を周りから挟み込んだりするタイプが主流ですが、壁がしっかりしていれば壁を突っ張るタイプも安心です。

 このように様々な福祉用具の中から、自分の家で使える福祉用具を選び、そしてその福祉用具を使うことでお年寄りの自立を支え、介護者の介護負担が少しでも軽減されれば何よりだと思います。

 次に住宅改修を活用した事例を、一級建築士事務所自然の東道尾さんにご紹介いただきます。

 バリアフリーは、お年寄りや身体の不自由な人に限ったものではありません。よそ見をしてつまづいたり、バランスを崩して「ヒヤッ!」とした経験はありませんか?
 ちょっとした工夫で『住まい』を安全・快適にして健康で暮らしたいものです。
 そこで今回は、玄関に「手すり」をつけた事例を二つ紹介します。

事例1
右手が不自由で歩行にも不安がある男性80歳の住宅改修事例
写真1
 写真1は玄関の下駄箱に直接取り付けた「木製の手すり」です。
 上がり框の段差を移動するとき、靴の履き替えや靴ベラを使う時に、しっかり支えてくれます。
 費用は2万3千円で、介護保険を利用したので一割の負担で済みました。
事例2
脳梗塞で右マヒ(軽度)、軽い痴呆の男性75歳の住宅改修事例
 写真2は改修前の写真ですが、上がり框の段差が高く、奥行きも30cmと浅いのでガラス戸に身体がぶつかっていました。
 そこで、玄関が少し狭くなりましたが、写真3のように、玄関の「縦手すり」(イレクター加工)をつけ、奥行きを前方に広げ70cmにしました。すると、本人も同居する家族も出入りの動作がスムーズになりました。
 費用は手すりが8千円、上がり框が3万円で、手すりだけ介護保険の対象になりました。
写真2(改修前) 写真3(改修後)

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