居宅介護支援事業所KDケアネット 所長 齋藤 眞樹 URL http://www.kd-rehome.com
 今まで気にならなかったドアの段差にひっかかりヒヤリとした思いがありませんか?便座から立ち上がろうとした時や、浴室で低い台に座りながら体を洗い立ち上がろうとした時、気づいたら何かに捉まって「おや?」と思った、という事がありませんか? 年齢と共に少しずつ足腰が弱くなります。知らず知らずのうちに何かに捉まりながらなど、壁や台を補助替わりにしているものです。そこで、思わぬ危険が潜み、体を支えきれず転んでしまった、という事にもなるものです。
 介護が必要になられてから介護保険制度で住宅改修制度を利用されるのもひとつ。しかし、事故にあわれる前に予防的に使われるのもまたひとつではないでしょうか。

 今回は、なぜ改修が必要なのか、どのように改修を考えていくと良いのか、住宅改修について紹介します。

住宅改修(トイレ・玄関)Aさん(70才)
 座ったり立ったりする動作が辛くなり、座る時はどしんと腰を落とされる方のケースです。
 Aさんは排せつされる時、洋式トイレなのですが、立ち上がりが出来ず、いつも家族に手伝って貰っていました。完全な介助ではなく、ちょっと手を貸すだけで良かったのです。しかし、1人ではどうしても無理であり家族の手が必要だったのです。
 夜間、どうしても数回トイレに行くその都度、家族を起さなければなりません。家族に申し訳ないといつも話されていました。そこで、便器にそって縦の手すりを1本つける事にしました。排泄は1日数回、もちろん夜間もあります。いつもいつも家族に申し訳ないという気持ちがあり消極的になっていました。ご自分でトイレが出来るようになってから気持ちが明るくなりました。家族とは排せつ以外の話が多くなり行動も積極的になりました。
 手すりは改修の窓口とも言われます。手すり1本から考えてみてはいかがでしょうか。
 玄関も同様です。上がり框の上り下りが結構大変だという方が多いものです。手すりの設置と共に、式台というものがあります。これにより上がり下りが楽になったという声を随分と聞きました。外出がスムーズになると、億劫だった気持ちが前向きになってきます。笑顔が自然と出てくるものです。家族としても嬉しいことですよね。 
 介護保険制度を利用されて改修される方は、対象になるものとならないものがありますので、ケアマネジャーか自治体に相談することがいいでしょう。
手すり(トイレ):1人で立ち上がる事ができ、夜間家族をその都度起さなくても済む。 手すり(玄関):外出がスムーズになる。 式台:介護保険では改修費の支給対象。
腰掛台:玄関で靴の脱ぎ履きもこれひとつでだいぶ楽になる。腰掛台は介護保険の対象外。

住宅改修(お風呂)B子さん(60才)
 膝を悪くした方のケースです。
 B子さんは浴槽が深く、出入りが大変になってしまいました。ユニバーサル用のユニットバスに全面改修しますか?それもいいでしょう。しかし、私たちケアマネジャーは、その人の行動や身体状況をしっかりみます。
 体を洗う時の立ち上がりが大変であれば、福祉用具のシャワーチェアーがあります。浴槽が深くて出入りが大変であれば、浴槽内に入れる台があります。浴槽内すのこもその一つ。そこに浴室用手すりがあると、浴槽内からの出入りが随分と楽になるのではないでしょうか。これらの福祉用具はすべて介護保険制度で利用出来ます。改修だけではなく、福祉用具も上手に使った事で、全面改修しなくとも、その女性の方の入浴動作を助けることが出来ました。
 改修が難しいからと、無理を続けていると、悪くない所に故障がでてきます。膝をかばうため、腕に力を入れ肩が痛くなっていませんか?腰に痛みが来ていませんか?その方もそうでした。悪くならなくてもいい所に負担をかける事で、全体に生活行動が悪くなってしまうのです。
 このように上手に福祉用具活用と、改修をすることで、生活が楽になり、その人の生活そのものを支援する事ができます。それが私たちケアマネジャーの役割でもあります。あなたの動作をちょっと見直して見ませんか?

浴槽内の台:深い浴槽でも高さを調節できる。 浴室用手すり:浴槽への出入りが楽になる。

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