個別相談実施例 山下信夫さん(仮称・67歳)のケース
 山下信夫さんは60歳を過ぎうつ症状が現れ、65歳頃より日常生活に支障をきたすようになってきた。その後入退院を繰り返し、パーキンソン病の診断を受け、現在、介護保険の要介護認定で要介護度3の認定を受けている。市街地から車で20分程度に妻の八重子さん(仮称)と二人暮らしで、札幌に娘が一人、近隣の町に息子さんが二人住んでいる。
 八重子さんは右手に外傷の後遺症があり、手に力が入らないので日常の介護や生活にも支障がある状態。排泄介助、入浴介助、食事介助など八重子さんが一人で行い、昼夜問わず介護しなければならず、身体的負担が大きい。また、近所の干渉もストレスに感じることが多く、信夫さんも最近特に自発性が低下し、八重子さんの問いかけに答えることが少なくなり、それに対しても強いストレスを感じている。
 信夫さんは、週一回水曜日にデイサービスを利用。身体状況は、動作の緩慢さ、振るえ、小刻み歩行など。また、衣服の着脱が不自由で、記憶の喪失などの痴呆症状がみられる。日常生活は、ベッドからの起きあがりなど全てに介助が必要で、座位になっていると倒れてしまうので、支えが必要。歩行は前のめりに小刻み歩行なので、つまずきやすく、屋外では杖を使用している。
 食事はこぼすことが多く八重子さんの見守り、声かけが必要。排泄はポータブルトイレを準備しているが、歩行もリハビリのためという思いもありトイレまで誘導している。トイレでの下着、オムツの着脱は八重子さんが行っている。
 入浴は、週に1度のデイサービスで行い自宅では行っていない。着替えは、ほぼ全介助の状態。ひげ剃りは、時間がかかってもシェーバーで信夫さんが行うようにしている。
 家事は八重子さんが行っており、一戸建てのため、今まで信夫さんが行っていた草刈りや、薪割りなどの自宅周りの仕事も行っており負担が多い。経済状況は夫婦二人の年金が月約18万円。信夫さんはデイサービス以外に出かけることはなく、八重子さんも近所付き合いも少なくなってしまった。
 八重子さんからは「信夫さんが少しでも自分の身の回りのことができるようになってほしい、できれば外の草刈りくらいはできるようになってほしい」と相談された。

体力の向上と適切な福祉用具など
 信夫さんの自発性低下による廃用性障害が進み、筋力の低下が著しく、起きあがりが非常に辛く大きな介護負担になっています。そこで、室内でできるバランス力向上の運動と、介護負担を軽減するために安楽な指定位置に移動用バーを取り付けるなど適切な福祉用具選定をすることが必要です。
夫婦で明るい生活をおくりましょう
 パーキンソン病は進行していく可能性があり、八重子さんが悲観的になっていることが介護に影響しているようです。夫婦で暗くなってしまわないように、できるだけ一人の時間を大切にし、デイサービスの利用を増やしてみてはどうでしょうか。ケアマネジャーさんに相談してみてください。
 個別相談実施後、地域の支援関係者や家族が様々な支援を行いました。信夫さんは現在は身体状況にあった運動をデイケアの理学療法士の指導で行っています。また、支援バーを取り付け、立ち上がりができるようになり、本人の自信にもなったようです。
 段差がなく、手すりも完備されている住宅に引っ越しをし、以前よりも安全になりました。
 福祉用具の使用については、車椅子の生活となったため、臀部の発赤防止のためのアクションパッドを使用しました。ベッドのサイドレールを支援バーに変更しエアマットも使用するようになりました。

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