北海道介護実習・普及センターでは、地域の高齢者やその家族が住み慣れた地域で安全に、 そして安心して生活を送れるように、介護予防も含めた介護知識や介護保険、 福祉用具の利用や住宅改修の活用方法について理解を深める『介護講座』を毎年実施しています。

 今年度からは特に介護予防に重点をおき「介護予防基礎講座」として、 高齢者一人ひとりがいつまでも元気に生活するために毎日の生活の中で取り組めるポイントについて学びました。 そこで、今回はそのポイントについて、ご紹介します。

今日から取り組む介護予防ことはじめ @
北のくらしと地域ケア研究所 理学療法士 鈴木英樹

1.はじめに

 ここ数年、「介護予防」という言葉を新聞やテレビで良く目にしますが、具体的にはどういうことを指すのでしょうか? 簡単に申し上げますと、「日常生活において介護を可能な限り必要としないよう、可能な限り心身を元気な状態で保ちましょう!」 ということになります。
 日常生活を送る上で介護が必要となる原因には様々な原因が考えられます。高齢による老衰や心身機能の低下はもちろんですが、 それ以外にも、脳出血や脳梗塞といった脳血管障害や転倒による骨折により、日常生活に介護が必要となる場合も少なくありません。 今回は、これらの中で、転倒と骨折についてお話を進めたいと思います。

2.転倒や骨折と介護予防

 転倒に伴う骨折は、「介護を要する原因」の上位を占めており、実際、骨折する前は、 買物やパークゴルフなど、日常生活を活動的に送られていた方が、 転倒・骨折をきっかけにして外出や外での用事を控えたり、 家族に頼んだりするようになる場合もあります。 また、北海道のように雪が降り、 道路が凍結してツルツル路面になるような地域では、冬季間の屋外での転倒事故も増加傾向にあり、 多くの方が救急車で搬送されているのが現状です (ちなみに、札幌市の場合、平成16年の1,009人を最多に、毎年800人前後の方が積雪凍結路面にて転倒し、 救急車で搬送されています)。
 北国に住む私達にとって、雪道での外出は避けて通れませんが、幾つかの点に留意する事で、 転倒事故を軽減できる可能性がありますので、それらのことについてお伝えする事にいたします。
 もちろん、これからお伝えすることは、雪道での転倒予防はもちろんのこと、雪の無い夏場や、 家の中での動きをしなやかにするためにも役立つ内容ではないかと考えています。

3.雪道での歩行をより安全なものにするための留意点

@滑りやすい場所や時間帯を知る

 転倒に伴う骨折は、「介護を要する原因」の上位を占めており、実際、骨折する前は、 買物やパークゴルフなど、日常生活を活動的に送られていた方が、 転倒・骨折をきっかけにして外出や外での用事を控えたり、 家族に頼んだりするようになる場合もあります。 また、北海道のように雪が降り、 道路が凍結してツルツル路面になるような地域では、冬季間の屋外での転倒事故も増加傾向にあり、 多くの方が救急車で搬送されているのが現状です (ちなみに、札幌市の場合、平成16年の1,009人を最多に、毎年800人前後の方が積雪凍結路面にて転倒し、 救急車で搬送されています)。
 北国に住む私達にとって、雪道での外出は避けて通れませんが、幾つかの点に留意する事で、 転倒事故を軽減できる可能性がありますので、それらのことについてお伝えする事にいたします。
 もちろん、これからお伝えすることは、雪道での転倒予防はもちろんのこと、雪の無い夏場や、 家の中での動きをしなやかにするためにも役立つ内容ではないかと考えています。

A様々な道具・用具の活用

 雪道の歩行を安全に行うための用具として、第一に帽子や手袋の着用が挙げられます。 これらを着用することにより、万が一転倒した場合でも、頭部や手首に加わる衝撃の緩和が期待できます。 また、転倒時に骨折しやすい大腿骨頚部(大腿骨の付け根部分)を保護する、 衝撃緩和パッド付きの下着もありますので、歩行に不安のある方は着用をお奨めいたします。
 また、歩行自体に不安のある方は杖や歩行器(車)、シルバーカーの使用も効果的です。 ただし、歩行器やシルバーカーを雪道で使おうとすると、車輪部分が雪に埋まってしまい、 夏のように使えない場合がありますので、その際には「ソリ」を使用すると良いでしょう。
 現在では、折りたたみが可能なタイプや、ソリに小さな車輪が付いたものなど、 様々なタイプのソリが販売されていますので、ホームセンターや福祉用具の販売店で相談してみると良いでしょう。
 さらに、外出時には、砂の入ったペットボトルを携帯し、 滑りそうな場所でサッと砂を撒くとより歩行が安全になります。
 砂の入ったペットボトルは交差点の砂箱の中に入っていますので、 気軽にお持ち帰りいただき、ペットボトルが空になったら、容器を砂箱に戻しておくと、 道路管理者が容器を回収して砂を再度詰めるという仕組みになっておりますので、積極的にご活用ください。

4.転倒予防のための体操について

 雪道を歩く際に様々な注意をしたり、用具を活用する事は大事ですが、それと同じくらい、 身体(からだ)の機能を高めることが大切です。身体機能を高めるといっても、 スポーツ選手になったり、飛んだり跳ねたりということではなく、今よりも少しだけ身体を磨き、 「しなやかに」体を動かせるようにするということです。
 身体をしなやかに動かすと言う事は、立った姿勢や座った姿勢などにおいて、 「重心」を自在に移動できる(動かせる)ということを意味します。また、 重心を自在に移動できるようにするには、@関節や筋肉の柔軟性がある程度保たれている事、 A重心を移動させた際に姿勢を保つための筋力がある程度保たれている事、などが必要条件となります。
 筋肉や関節を柔らかくするためのストレッチ体操や、筋力を強くするための運動を行う最終的な目的は、 身体をしなやかに動かす(重心を自在に移動できる)ということになりますので、柔軟性や筋力が保たれていても、 それらの機能が発揮され、身体がしなやかに動かなければ、目標達成とは言えないのです。
 それでは、実際の体操をご紹介いたします。

5.おわりに

 介護予防の目的は日常生活の中で介護を必要とする状態にならないように取り組むことですが、 単に介護を必要としない状況に努めるだけではなく、加齢により心身の機能低下と上手く付き合いながらも、 日々生きがいを持って楽しく生きる事を意味しています。
 運動を行うと言う事は、そのための一つの手段に過ぎません。 日々の生活の中で無理なく続ける事が出来る「何か」を是非見つけていただき実践して頂ければと思います。 何かを始めるのに「遅すぎる」ということはありませんよ。


今日から取り組む介護予防ことはじめ A
日本福祉用具供給協会北海道支部 支部長 毛利 智之

 「ひとの世話にはならん!」と言ってはみたものの、そうも言っていられなくなってきたら、福祉用具の活用を検討してみてはいかがでしょう。

 一日の始まりは、朝起き上がるところから始まります。起き上がるのが大変になってきたら、どうすれば良いでしょうか?身体を鍛える?家族に手伝ってもらう?でも、何かつかまるものがあれば一人で起き上がれるのなら、その何かを用意すれば良いのです。立ち上がりも同様に、何かにつかまれば立ち上がれるのなら、何につかまれば良いかを考えましょう。
 それがしっかりした台であれば台を、手すりであれば手すりを用意します。それでもうまくいかなくなった場合には、介護用ベッドの利用を考えましょう。
 そして、どうしても自力でできなくなった時にはじめて、人的サービスの利用を考えると良いでしょう。
 立ち上がったら、次は移動です。しかし、この移動が難しくなってくると、トイレや洗面といった日常生活の行為が億劫なものになってしまいます。それが一番いけません。
よく「歩けなくなったら終わりだ」などと言っているお年寄りを見かけますが、その通りなのです。ですから様々な用具を活用して、出来る限り自力で移動することが大切になります。
 手すりや杖や歩行器、車いすはよく利用される福祉用具ですが、ここで注意しておきたいことは、出来るだけ「簡便に」ということです。大げさな用具や、使うのに覚悟がいるような福祉用具は避けたほうが良いでしょう。福祉用具の利用はあくまでも手段であって、それが目的とならないように気をつけましょう。
 入浴する時の問題は、具体的には浴槽への出入りが大変になってきている場合がほとんどです。例えば、すのこで段差を小さくし、手すりを取り付けることでずいぶんと楽になります。入浴台や浴槽内イスも便利な用具のひとつです。入浴が億劫にならないように何を使ったら良いのかを検討してみてください。
 排泄はトイレでするのが望ましいのですが、トイレまで行くのが苦痛で、水分の摂取を控えるようなことになっては本末転倒です。割り切って、ポータブルトイレの利用を考えるのもひとつの方法でしょう。
 このように、何かを上手く利用してひとの世話にならずに済むのであれば、それにこしたことはありません。何より、気兼ねをしなくて良いということが一番です。
 「自分らしく生活するために必要な用具は何か」という視点が、福祉用具の活用を考える上でのポイントとなります。


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